燕と石と、山の鳥

連続殺人の事は、地元で起こっていたのもあって両親も心配だったらしく、その日俺と梨里子が一緒に帰って来た事を知って、お袋から"しばらく続ければ良い"との指令がでた。









「なんだね君は!?
ここのところ毎日来ていると生徒達から聞かされているんだが!?」



頭部に悩みのありそうな中年教師がびくびくしながらそうつっかかってきたのはそれから3日後。



この3日、何故かちょいちょい俺の行く先で絡まれてる芹緒を助け(そういえばあいつ日替わりで面を替えるらしい…)、その度に例の仕事のスカウトを断って、の、繰り返しでただでさえ苛々しているのに、いきなり来られてんなこと言われても…



「…………あ゛?」

「ひっ…!」



…ただ横目で見ただけのつもりだったんだがな。





「あら、志賀先生。
兄が何か粗相でも?」



真っ青になったハゲもとい志賀先生と俺の間に、ていうより俺の中に何となくやる瀬ない風が吹いたところに教師向けモードの梨里子の声がかかった。

それを聞いたハゲ志賀は弾かれたように梨里子に向き直る。



「あぁ浅水 梨里子君!
お、お兄さん!?
彼が浅水君の言っていた君のお兄さんか!
そ、そうかそうか…!
いやねぇ、たいしたことじゃないのだよ!
世間話でもと思ってね…いや、ははは…!」



白々しい笑いを残して去っていくハゲ志賀に梨里子が「ごきげんよう」と声をかけたので、俺も軽く会釈すると、奴は残り少ない毛根を痛め付けるのも気にせず全速力で校舎にリターンしていった。