燕と石と、山の鳥







「勘弁してくださいよー」


「緊張感ねぇなこいつ」

「なんだぁ?この面、縁日の帰りかってんだよ」

「おーい」

「あ、このお面ですか?これはですねぇ…」

「聞いてねぇしな」

「おーい」

「おい、なんか面白いもん持ってんじゃねぇの〜?」

「かわいい声してるよな〜女の子ぉー?」

「おーいってば」

「ヒャハハッとりあえず丸剥き行っとく〜?」



「聞け」

「ガフッッ!!!?」



後ろから声をかけても一向に盛り上がったままだったので1番近くにいた剃り込み入れた頭を蹴り倒す。

開けた視界の向こうで猫みたいに襟を捕まれぶら下がる芹緒がいた。



「あれあれぇ?誰かと思ったら"司馬高の狐"サンじゃあないんですかぁ〜?」



歯並びの悪い頭の悪そうな顔をした一人が俺の前に来て俺の視界の下で上から下まで舐めるように見てくる。

返事する気すら失せる。



「いつもは俺らに絡むなんてしゃしゃったマネしてこないのにどーしたーんでーすかぁ〜?」



…うぜぇ


「…そこの奴離してやれよ」
「おや?おやおやぁ?
おいおいなんだよぉ!
司馬狐ともあろうワルが人助けか?
こいつぁ傑作だぜぇっ!!」



げらげらと路地になんとも耳障りな笑い声が響く。

芹緒はなんにも言わずにこっちを見ているがこの距離じゃあの狐面の下の眼は見えなかった。