燕と石と、山の鳥

「んんーまぁでも、ちょっと気になる話があるっぽいのは知ってるかな」



理人はそう言ってワックスで固めた金に近い茶髪をいじる。
顔が広く人あたりが良いこいつは情報収集能力に置いては人並み以上だろう。

気になったらしい右側の前髪を少しねじると、俺に意味深な視線を向け、その口元を笑みの形に歪め抑えた声で続ける。




「殺された子には皆、その前日かその前の日くらいにストーカーっぽい奴に会ってるらしいんだよね」

「…ストーカー?」

「そ、事件のある数日前から門の所に他校の男子が立ってるって話も、あんまり出回ってない話なんだけど」



始業の鐘とともに教室に入って来た古典教師を確認すると理人は「怪しいよね〜」と残して前に向き直った。

俺もその事に関する考えは断ち切ってノートをとるためにルーズリーフを取り出した。





頭をついて離れようとしない不安感を振り払うように頭を振って首をコキコキとならすと、教壇でチョークを持つ気の弱そうな古典教師がビクリと肩を震わせた。