『…―今朝のニュースをお届けします。先日未明、またしても例の連続猟奇殺人の被害者が―…』







「…朝っぱらからハードなニュースしてんなー…」

湯気の立ち上る白飯の向こうで放送される地元のニュースに俺は思わず眉を潜めた。
無関係そうな顔をしたニュースキャスターがここ数日ここいらの市内を騒がせる猟奇殺人事件についての原稿を読み上げていた。



「噛み殺されてるから犬を使った犯行かもって話もあるんでしょ?」


今年の春に中学二年になった妹の梨里子(リリコ)が横合いから口を出す。

悪戯の好きそうなアーモンド型の眼の横で黒いツインテールが揺れる。




「なんで犬に噛み殺されてて野犬の仕業とかになんねぇんだ?」

「だって連続して女の子しかも若い女の子だけが殺されてるんだよ?
中には自分の家の自分の部屋で殺されてた人もいたって言うし…」



どう考えても人為的でしょ、などと言いながら俺の隣に腰掛けお袋が用意した朝食を食べ始めた。

そんな妹の様子をなんともなしに眺め、またニュースに目を戻すとキャスターはさっきと同じような顔で別の報道について述べていた。




「ごちそーさん」

「あ、紺(コン)ちゃんご飯食べ終わったんなら運び出し手伝ってって」

「うーい…っつーかちゃん付けないでって」


台所から声をかけたお袋にげんなりしながら返すと梨里子がころころ笑い声をあげた。



「"司馬高の狐"が家でちゃん付けで呼ばれてるなんて絶対ばれたくないよねぇ〜」

「うるせー」



ダイニングを出て親父の手伝いに行く前に洗面所の鏡の前でワックスを使い髪をまとめて後ろに流す。
外に出る時のオールバックのスタイルになった自分を鏡で確認し、「目付きわりぃな…」と小さく零すと洗面所を出て家の店舗部分に向かった。



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