死んじゃったらもう、話せなくなっちゃうのに。

誰かを亡くしたことがないからそんなことが言えるんだ。



「…マミ」

「本当のことだし、謝んないよ」



いくらくそ親父だろうと、たった1人の父親なんだし。

そのぬくもりが無くなってしまう前に、伝えなきゃいけないんだ。

いつ消えちゃうか、わからないから。



「マミ、」

「ごめん、ちょっと風に当たって来るわ」



ベッドから抜け出して部屋を出る。

アスターは追い掛けて来なかった。



「……はあ」



だめだ、余計なこと思い出す。

バラ園にでも行こう。

ぎゅっと目を瞑って、消えたはずの感触を追い出す。