「あんまり先生必死だったからな」
笑う植木君の首には何も居ない。安心した私は小さく息を吐くのだった。
昨日の試合の時、屋上から《影》で引っ張りながら滅したのだ。それを《玖珂の若頭》に勘付かれたというわけ。
…まぁ、とにかくだ。家に帰ったらリチャードにお稲荷さんを用意させるか…
こんな状態だからまともに料理なんて出来ないし、自分の洗濯すら出来ない。軽く落胆するがこれも自分がまいた種なんだと思うと余計に情けない。
今日の調理自習は《青椒肉絲と卵スープ》なので香ばしいピーマンの香りと合わせ調味料の良い匂いがする。
どうやら植木君はピーマンが好きじゃないのか、物凄く嫌そうな顔をしている。何か面白い。
「…何笑ってるんだよ、高村」
「だって植木君ピーマン嫌いだなんて可愛いと思って。クスッ…」
今の発言で多くの女の子の耳がピクンっと動いたような。そして「菊花、早く植木君の好きな食べ物を聞き出せ!」というみんなの声がバンバンに聞こえるんですが…
どうしてウチのクラスってこういう時だけ一致団結出来るのよ。
「そういう高村は嫌いじゃないのかよ…」
「同意を求めるような聞き方は止めた方が良いよ植木君。私は嫌いな食べ物はないな…」
「ぐっ…」
苦笑しながらその様子を見つめるが、本当にピーマンが苦手らしい。
「じゃあ、植木君の好きな食べ物は何?」
「俺?俺は…お菓子とかオムライスかな…」
(も、萌え?!)
大勢の女の子が鼻血を吹き出しそうな勢いで悶える姿を私はバッチリと確認したぜジョンソン!
そして植木君の照れながら告げる姿に男子生徒すら悶えたような気がした私なのであった。
ていうか男前って何しても格好良いんだね…改めてそんなことを感じた瞬間でした。
(アレ、作文?)

