左腕を軽く摩りながら「痛た…」と呟いた、どうやら誰かに衝突してしまったらしい。
「だ、…大丈夫っですか——?」
「あぁ………——っ!!!???」
スリッパを見てみれば「赤」だったので一年生と解った。そして、顔を上げればどうやら相当痛かったのか変な顔をしていたのだ。
「ほ、本当に大丈夫?怪我してない?」
「ちょっと、正ちゃんしゃきっとして!高畑先生の授業始まるよ?!」
突如可愛い声がして、そちらの方を見てみれば可愛いお嬢さんが居た。——どうやら彼女ようだね。
私は利枝と他の友達から手を借りて立ち上がりながら、少年に「ゴメンね?」と告げて家庭科室まで歩き出す。
「にしても男前な一年だったねー。利枝?」
「それよりアンタは注意深く行動しなさいよ!そんな怪我してるんだから!!」
「そうだよ菊花。注意散漫だし、さっきの男前の青年が不憫だよ」
「オイコラ、怪我を負っている私の方が不憫だってば!!」
どうしてみんなそんな仕打ち?!
少しぐらい私のこと労ってくれても良くない?!と思いながら、私はまたもや家庭科の先生に哀愁を帯びた目で見られた。
「高村さん、何があったか先生知らないけど。今日は見学で良いわ!」
「いやいやいや…先生、私授業に参加出来ますよ」
「良いのよそんなに強がらなくても!先生、そんな意地悪なんかじゃないから!」
そう言って花柄のハンカチで涙を拭う姿を見てしまって、肩をガックリと落とす私なのであった。
「高村も大変だな」
「…植木君も笑っているなら助けてよ」
ククッと笑う植木君は既にエプロンに三角巾をしており、余計に爽やかオーラが溢れていた。
(め、目の保養…)

