「…鏡子はまだ何も悪いことなんざしてネェよ!!滅される理由が無い!それに傍若無人に滅された妖怪達のことはどうなんだよテメェ!」



今の俺に理性なんか残っていない。殆ど本能で叫んでいる。

それに続くようにしろも叫ぶのだ。



「そうだ!!鏡子は悪い事なんて何一つもしてない!一百鬼夜行の頭にそんな権限なんて無いはずだ!!」

「そこの白狐の言う通り、そこの子は"まだ"悪いことなんてしていない」





「"まだ"だと……?」

正影の美しく化粧の施された顔が歪む。

「そう"まだ"ね」







——そう遠くない未来にこの子は滅されなければならない重大な罪を犯すの。







「わ、わわ…私はそのような事は致しません…!!」

「そうだ!何、根も葉もないことをばっかり抜かすんだ地味女…」

「いやー。これがあるんだなー?それにあんまり舐めた口利くと…」




菊花の開いた掌がぎゅっと拳になった瞬間に、





「「ぐああぁぁぁ!!」」




正影と白の叫び声が重なるように紡がれる。肺が押しつぶされそうな感覚、嘔吐の気配すらする。


「あははっ。何それ?正義の味方ぶって面白いねー」



コイツは本物の"悪"と認識すると《鳳》の炎が色濃くなったような気がしたのだ。