「主……。早く滅されなければ、」

「まぁまぁ蛇帯、少しぐらいはこっちの余興に付き合ってもらおうよ?」


《百鬼夜行の頭》は道路の端に落ちていた白い羽織りものを拾い上げ、またそれを着るのだ。

そして、正影に歩み寄りながら妖しい笑みを浮かべる。



「貴方、《光を統べる》ものなんでしょう?」

「それがどうした!鏡子をどうするつもりなんだ?!」

「落ち着きなって。私は貴方と対になる存在、《影を統べる》もの。この戦いはどちらにとっても不利なもの」


正影と菊花、対になる存在。それは自然に逆らえない摂理。後に壊れる存在なら最初から壊さないと。


「そんな事どうでも良い!俺の質問に答えろよ!」

菊花は指を軽く動かしながら、鏡子の影を手繰り寄せる。そうすると宙に浮かんでいる鏡子も釣られるようにやって来るのだ。


「わ、若っ……白ちゃ…ぁん…!消え、たく…ないっ…!!」


大きな瞳から大粒の涙が溢れ、苦しくもそれを拭うことが出来ない自分に苛立を感じる白と正影。











「私の目的はただ一つ。








——この子を滅することよ」







鋭く紡がれた言葉に誰もが絶望し、遠くで誰かが笑うような声が聞こえた。