まんまと鏡子の「万華鏡」に陥った女。
刀を抜刀して、いつでも戦う準備が出来ているようだ。俺は他の妖怪や付喪神たちと「亜空間」を創るのが得意だ。
そして、その中でも「万華鏡」で精神状態を壊さなかったモノは居ない。俺の《鳳》の炎は相手の能力を限りなく弱めることが出来るのだ。
我が秘宝でもあるこの刀の能力を存分に使わせてもらうぞ、女——。
「何をキョロキョロしているんだ?俺ならここだぞ」
万華鏡に沢山映る俺の姿。炎の光と赤い着物の艶やかさが引き立つ。
「べ、別にキョロキョロなんてしてないし…!こ、心の瞳で…」
「の割には挙動不審だ」
何が心の瞳だ。思っくそきょろきょろしまくって動揺してるじゃネェか。
そして、菊花はじわりと嫌な汗をかくのを感じた。「玖珂正影」という男の鋭い眼光がいくつも光っている。
「余興の前に聞いてやるよ。——お前の目的と身分証明を」
この場合は生徒手帳を渡したいところだけれど、生憎今は持っていないしね。
「酒の余興かね…」
「いんや?テメェを完膚なきまで滅し、地獄に堕としてくれよう」
入り交じる光景に視界がやっぱり犯されていることに気付く…。

