「見つけた。——"玖珂の若殿"」



闇の中から現れたのは——









——あの"地味な女"だった。



驚愕よりも恐怖が勝ったのだ。狂気にも似た殺気、陽炎のせいなのか…幻のように艶やかに見える。

留まらなく放出される《妖気》。——あの女から一度も"妖怪"の気配などしなかったぞ?!



そして、作戦を実行前に彼女に出会ったことをこんなに後悔するとは思わなかった。ただの出会いなのに、


相手側が情報を想定してこちらに応戦すると思っていたが、こんなに凌駕するとは聞いてネェぞあの馬鹿ストーカーめ……





「…あの時の地味女。間違いねぇな…」

「ちょっと?!アンタ私確かに地味だけど失礼よ!」

「そのパッとしねぇ感とかクラスによく存在感無いって言われるタイプだろ」

「ぐッ——!」


図星かよ、と正影は内心で思いながら。本当にコイツが百鬼夜行の頭なのかと疑問を抱いたが…


この「妖気」は確かに妖怪のものだ。だが、この女は紛れも無い人間。


どういうことだと頭を捻りたいが、そんな暇には今の俺には持ち合わせていない、




「自分が綺麗だからって、人を見下すな女装趣味!」

「へぇー。俺が綺麗だって僻むなよ、小っせぇ女」



「若!!」


鏡子の悲鳴にも似た呼び声にハッとした。白がやや呆れ顔なのはスルーしよう。