「た、大変です若!!!!」

「何だ鏡子」


青い顔した鏡子が俺の着物を掴んで縋って来た。白、俺をそんな恨めしそうに見るなと思いながら鏡子の髪を撫でた。


「神影の着物が燃やされたとか、冗談でも言わない方が良いと思うぜ?」

「ち、違いますよそんな!!!す、スザク様が!!









滅される手前でございます!!」





「何だと?!」

何でスザクが?!確実にあの「亜空間」に誘き出したはずなのにどういうことだ!


「す、スザク様が?!」

「ど、どうしましょう…!!毘沙門天様も捕らえられています!!」



体の血の気が引いた。
四天王の毘沙門天と畏れられている——あの神が捕らえられているだと?


そして、同時に怒りが体全体から現れたような気がした。


鏡子の鏡は千里眼のような能力も持ち、遠くの現状が鮮明に伝わるのだ。そして、その情報が外れたこともない。だからこそ、信用出来る情報だから恐怖が背中を這いずり回る。



「——鏡子、千影たちは…」

「五分五分といった状況でございます…」



俺の《鳳》が揺らめくのを尻目にし、遠くの闇から何かの気配を感じた。



周りの影が強く、色濃く、動いている気配。俺の力を舐めるなよ、《百鬼夜行の頭》よ。


瞼を閉じれば、鮮明に浮かび上がる「家族」の姿。誰にも傷つけさせない、誰にも手出しなどさせない。