「小娘、御主——一体何ものじゃ」
ゴトンっと、一升瓶を置く毘沙門天に菊花は笑う。
(本当にこの方は"自然の摂理"を理解している)
「我が名は"高村 菊花"。影を統べるモノであり、《魑魅魍魎の主》でございます」
——魑魅魍魎。
意味は様々な妖怪。魑魅は山の怪、魍魎は川の怪である。
人間の間では「汚いもの」などの例えを用いられる。
「…魑魅、魍魎——」
「そうですスザクさん。残念ながら貴方は平安京という都会の妖怪」
菊花は腕を掲げ、手の指を全て開くようにしている。
「私は魑魅魍魎の主であり、百鬼夜行の頭です。——あまり出しゃばったマネをするのは、」
そして、勢い良く掌を拳にした瞬間!
「ぐあぁあぁぁあああああ!!!!!」
「関心しませんよ——?」
スザクの体は地に落ちた。
そこに響いたのは、笑い声。毘沙門天の豪快な笑いではなく、艶を含んだ女の高らかな笑い声。
「そっちが正義の味方なら、私は《悪の総帥》ね」
静かに毘沙門天が酒を飲むのを尻目に菊花は颯爽と歩き出す。
地で悶え苦しむ「朱雀門の鬼」は狂気にも似た声を上げ、苦しむ。
「小娘、御主は"玖珂 正影"に必ず滅されるじゃろう——!!」
動けない体に悶えるのは、どうやら彼だけではなかったようだ。
待ちわびている——その力を。私は、「 」を思うのよ。
「私の《影》で動けぬ神に忠告される義理などありません」
冷ややかな視線、憎悪、狂気、血が入り交じる空間。
「それが戦場よ」

