千影率いる玖珂の物が菊花の元に辿り着くと——




何とも——おぞましく、奇妙で、吐き気を誘うような出立ちをした妖怪が佇んでいた。あの狂気と殺気を孕んでいるオーラを醸し出すのは皆「魑魅魍魎の主」しか知らないのだ。



王のような風格を漂わし、濡れたような夥しい量の髪の毛が蛇のように畝っている。


(——これが、誰もが"屈服"するオーラか)



スザクは汚いものを見るような目で「菊花」を見つめた。いや、最早あれは薄幸そうな「菊花」ではない。全くの別物になってしまった。


——唯一変わらないのが、いつだって闇を宿していた目つきが変わらない。それが爬虫類のような瞳になろうがならないだろうが。

"最早人間でわない"、そう言うのが正しい。舌も蛇のように別れて——普通の娘の姿がここまで変貌するといっそ清々しい。




「——等々、"本性"を現したな"菊花"」




「おんやスザクさん?私はいつだって、"全て"曝け出してましたよ」





声も——変わらないメゾソプラノ。だが、声に感情と抑揚を感じないのだ。
そしてその菊花の横に、








——巨大な大蛇がこちらを狙うように、主を守るように菊花に巻き付いていたのだ。



このような姿をあの金髪の青年に見せてはいけない、そんな警告すら頭に鳴り響いた。邪を孕む集団。本来ならば俺達も"あちら側"に属するべき——






(だがな、)




「——確実に消滅させるぞ、千影」

「——お前に言われなくとも解っている、スザク」