そこに佇むのは——



何メートルにも伸びた黒髪、全てを引き裂く長い獣の爪、黄色の爬虫類の瞳、呪いの刺青のような紫の化粧が顔中に施され、上半身は裸体となり豊満な胸が曝け出され、




「……あ〜あ、美味しくないわ」


口許を様々な血で汚し、梅色の唇が汚い赤に染まる。


そして——下半身は蛇になっているその女は——





「——菊花様、玖珂の若頭がこちらにやってきます」


「——お前ももう"堕ちる"ぞ小娘ぇぇええええ!!!!」



その「化け物」の目の前には黄金の天狐が気高く叫ぶだけ。さすがに神の力には敵わないけれど——ここで退く訳にはいかない。


鴉丸により取り押さえられている大槻は既に死が見えてしまいそうだった。この女は本物の化け物だ。


——見た目は醜く、心も闇のような冷たさと醜さを兼ね揃え、肌も爬虫類のような気味の悪い冷たさを持っている。



——何が本当で嘘なのだ。何が目的で、この女は本当に「何が」したいのだ。



(私はどうなってしまうのだ——)



ひらりと舞う蝶に一縷の思いを懸けたい。







「"今"の私を滅することなど出来ないわ」

「——儂を舐めるなよ」




この温もりを忘れたくなくて、私は何度も「罪」を犯してしまう。


さぁ——楽しい楽しい物語を紡ごう。私達がこの物語の主要人物なのだから。



月明かりのもと、歪んだ笑みを浮かべた"魑魅魍魎の主"は地面を這いながら手を不意に伸ばしたのだ。