唇をギリっと噛み締めたが、正影は直ぐさま友人達の元へと駆け寄った。
二人共……蓬萊のお陰で幾分か顔色が良くなって来ている。
「…蓬萊、どうだ」
「——体には異常はありません。ですが、"何かが"可笑しいです」
擬人化をした蓬萊の白髪のような銀髪が揺らめいてきらきらしている。そして——眉を顰めて訝しげる。
"魑魅魍魎の主"の目的が解らない。
——早くしなければ、大槻が滅されてしまうのだ。
立ち上がった蓬萊は瞳を閉じながら、主の無事を願うばかり。彼は"私"を助けてくれたのだ。
疼く心が、使命が待ちわびているのだ。
(——呆れる程に貴女は愛していらっしゃいましたね、)
輝いた時を思い出すのだ。——きらきらと星屑のように輝いていたのだ。
何もかもが煌めいていて忘れられないんだ。
「——なあ、白い蛇。美鈴は"悪い"のか?」
ふと、金髪の男が朧げに言い出した。目は憂いと怒りに満ちあふれていた。
その瞬間、夏の夜風が吹き渡って——竹林を通り抜ける。全員の髪を揺らし、瞳さえ揺らすのかもしれない。
「解りませんよ。私はあの娘ではありませんから」
「馬鹿吐くんじゃねぇ萩原」
正影は妖艶な姿のまま龍星に不死鳥を突き立てた。
「——お前は本当に美鈴の存在を"否定"すんのかよ」

