僕は非力ながらも抗う。馬乗りをする吸血鬼から逃れるように一生懸命暴れた
。
「精霊師——君は何処からその力を受け継いだのかな?菊花は知っている?リチャードも知っているかな?」
『ホズミ、早く名を呼ぶのだ!』
サラマンダーや他の精霊達の声が響き渡るが、喉が急激に乾いて名前が呼べない。
"何処"から受け継いだ——
「…ヨーロッパでも見た事ないのに、どーして日本で見つけたのかなー?」
「……し、らない……。菊花先輩にも言ったはず、」
手首から鈍い痛みが走るのだ。この竹林は恐ろしいぐらい、本当に吸血鬼には似合わなかった。
——そう、僕は何も知らないのだ。気がついた時にはすでにこうなっていたのだから。
「しばっくれない方が良いんじゃないのー?まっ、菊花が事情を知っているなら改めて聞く必要なんてないけどー」
「ふ、ふざけるな!先輩は何しようとしているんだ!」
刹那——爪の伸びた吸血鬼の手が僕の頬を引っ掻いた。穂積を見下ろす目はあまりにも冷たかった。ゴミを見るような瞳だった。
「——菊花の邪魔をする奴は地獄に堕ちちゃえ」
その瞬間、穂積の首筋に牙が立てられた。

