「——あははっ、僕を危険と認知しただけでも褒めて上げようか」
火だるまになり、聖水に浸され倒されたはずの吸血鬼はのっそりと立ち上がり——
吸血鬼特有のマントを脱ぎ、黄金の髪の毛を掻き揚げて、青い瞳を光らした。月光により光る八重歯。
「僕はそんのそこらの吸血鬼じゃない。君みたいな精霊師でも倒せないよ〜」
「…煩いっ…」
「ふふっ、そう言わないの〜
——すぐ、楽にしてあげるから」
——刹那に、穂積は吸血鬼に入り身され押し倒されていた。鋭い爪をわざと生やし、手首に食い込ませる。
「へぇ〜近くで見ると綺麗な肌〜」
「お、下りろ!!男色家か!」
「えぇぇ〜両刀って言ってよ〜。妖怪はわりかしバイセクシャルかと思っていたけど〜?」
(僕、ヤバくないか?!)
妙な危機感を覚える穂積だが、何とかこの状況をまとめて打破する方法を考えていた。
「君は〜菊花のお気に入りだから、手ェ出したくなかったんだよね〜。でもさ、菊花の邪魔をしちゃうならさ、
——血を吸い尽くしちゃおうかな?」
その瞳は狂気に帯びている事だけは解った。

