魑魅魍魎の菊




「それ以上美鈴を侮辱するような言葉を吐くなぁぁああああ!!!」


…お前に何が解る、お前に美鈴の何がわかるんだ!

あいつは…あんまり笑顔を浮かべないが、心優しい女の子なんだよ!



「……侮辱?馬鹿を吐かすな。美鈴は生まれながらにして【蛇の物の怪】だ。お前の尺度で善悪を決めるな——蛇は生まれながらにして邪悪だ」


「黙れ!美鈴はそんなんじゃねぇ!——あいつは、アイツは寂しかっただけだ!!」



俺は怒りに任せて、拳に霊力をまたもや込めて奴を殴ろうとするが!今度はひらりと蝶のように避けられてしまうのだ!!


何が——【邪悪】だ。



「美鈴は白い蛇ではない。知っているだろう?白い蛇は神の使いで"善"とされている。最早生まれながらにして人を幸せに出来ない。それをお前は——蛇を恐れながらも、美しい人間の姿をしている美鈴を養っている」


「——っ?!」




その瞬間、先ほどまで向こうで井上と戦っていた吸血鬼が——背後に立っておいた。


気がついた時には——




「——いただきま〜す、









——ニンゲン」





「お前は見た目さえ良ければ、恐れるべき存在さえ養えるのか?」

侮蔑の表情を浮かべるホムンクルス、そして、龍星の首筋を立てる吸血鬼。体が芯から冷えるような感覚——


力を吸い取られる感覚——



(俺は、っ——違うんだ…)