大槻は唇を噛みしめながら、自分のことを酷く呪った。

このようなはずではなかったのだ。




少しでも伝えたくて、痛む心が——








(——ごめんなさい、ごめんなさい…)


思っていても、口にしていてもきっと伝わらないだろう。私は彼に嫌われて、恨まれても仕方ないことばかりをしてきたのだ。



瑠璃丸の家族を殺し、畑をも奪い、どこまでも彼に追い打ちを掛けたのは他でもない「大槻」が原因なのだ。



空色の瞳から涙を流してしまいそう。だが、そんなのはダメだ。泣いて全て済むだなんて、それで許されると思っているような女にだけはなりとうない。





(——竹よ、何故君はこんなにも無情なのだ)





「——退け、そこの"女"を殺さなければ気が済まない…」



瑠璃丸が低くそう放つと、双方は武器を持ち直して一気に御堂を駆けだしたのだ。もう誰にも止められない、この殺気じみた空間を誰が止められよう。




「貴様っ!!大槻殿に向かって、何を言うか!」


腕っ節の良い武の神が斧のようなモノを振りかざすが、華奢な瑠璃丸はいとも簡単に鉈で受けとめる!



そして、援護のような形で他の神の能力が瑠璃丸を襲う!!触手のようなものが伸びて瑠璃丸の体に巻き付くが…


まるで舞うように避けて、その鉈で神々を切り刻んでいく——



その駆けゆく姿はまるで「鬼」のようだ。



相変わらず瑠璃丸の背後にはどす黒いものが渦巻いている。