瑠璃丸は大槻が神や物の怪と会議をしているということでお茶を部屋に届けに行こうとすると——…
何故か使われていないはずの部屋の方から蝋燭の光が伺えたのだ。現在は丑三つ時、大槻の知り合いでも居るのか?
私は小さく首を傾げながら、こちらにもお茶を御出ししようと思って廊下に座った瞬間。
『——大槻殿は何故、あの男を生かしていらっしゃるのだ』
大きく瞳孔が開いたような気がした。そして、その声には一切の感情が含まれていないことに心臓がひやりと冷えたのだ。
"あの男"とは——私の事なのか。
瑠璃丸はそっと息を潜めて、小さく耳を立て、身を屈めたのだ。どうしてこんなにも脈が大きくなるんだい。
『そうだ——あの家の者は"厄"に取り憑かれているんだぞ?』
『大槻殿の命で我々が直々に手を下したというのに』
ふと、
何とも言えない虚無と吐き気に苛まれた。
息が出来ない、体を熱い血液が凍ってしまったのではないかと勘違いをしまいそうだ。
(何だ何だ何なんだ!!!!)
——厄に取り憑かれている?生かされている?手を下した?
頭が錯乱状態に陥ってしまっている。違う、きっともしかしてこれは夢なんだ。それは私のことではないんだ。

