生きる活力すら失っていた瑠璃丸は「大槻神社」で暮らすようになっていた。神主の言いつけはよく聞き、懸命に働いてくれた。



今も汗を流しながら竹を切っている。人間、居場所があるとこうも変わるのかと大槻は関心し嬉しく思った。





「ふふっ、瑠璃丸ったら。その白蛇に懐かれているのね」

「そうみたいですね…。まったく、私に着いて来ても面白くはないぞ?」


最近竹林で発見した白蛇の赤子は瑠璃丸に懐いてしまって、四六時中いつも一緒に居るのだ。


「シャァアー!」

「もう!!瑠璃丸、この子私のこと怠け者と言うわ!!」

「まあ、当たらずしも遠からずってところですよ」

「何でぇぇえ?!」



私、そこまで神のお仕事サボってないわ!

叫べば、瑠璃丸は笑いながら「冗談ですよ」と言うのだった。













瑠璃丸は丑三つ時になるとぼんやりと思っていた。
自分"だけ"が何故生きているのか?


そして、他の家族は病で倒れ。畑までも駄目になってしまっていたのだ。なのに自分だけが無事だ。

何度か大槻に聞いてみようと思ってみても、あの澄んだ青色の瞳を見るとどうしても気が引けてしまうのだよ。



彼女はとても優しい人だ。こんな荒くれた私を拾ってくれた。仕事も与えてくれたのだ。





何より——笑顔が温かい。



外の闇は濃くて、物の怪たちが最も活動している時間だ。どうも騒々しい、だがこれも大槻と関わって行くうちに当たり前の光景になってしまったので今更驚かなくなった。