「スザク!!お、おめー…何でここに?!」

「まぁ、そんなことどうでも良いじゃないか。それより美鈴は凄いな——…」



さすが、《沼御前》の娘と言うべきか。…そして、あの瓦礫付近で血を流しているのは恐らく菊花であろう。

ぴくりとも動かない——…





「——若造が、粋がるな」


美鈴の張りつめた空気に龍星は動けずに居る。玖珂の隣に居る着流しの男が何故一緒に美鈴と居たのかは後で問いつめるとして——…


『オ前モ死ネ!!!!消エロ、消エロ、オ前ガ居ルカラ!』


ふわりと風が吹いて、美鈴のスカートが揺れて。

小さな少女は一歩も動かずに大蛇を「オーラ」だけで威圧している。そして漂う《妖力》。




「——美鈴ちゃん、逃げるんだ」

俺は静かに呟きながら、新たに式神を発動させようとする。


「いいえ正影様。この大蛇は《嫉妬と欲望》で増幅された私と同じ"物の怪"……何かを殺さないと気が済まないでしょう」

「だけどそんな犠牲を出すの?!」


穂積も叫びながら、新たに精霊を召喚させようとしている。大きな犠牲なのか、小さな犠牲なのか誰にもわからない。



『殺ス、殺ス!!!!』




その瞬間、妖力に慣れ出した大蛇が大きく牙を剥き美鈴に襲いかかるのだ!!




「美鈴——!!!!」




龍星は殆ど本能で飛び出した。——本当は"あの日"から蛇は大嫌いだ、柄を見るだけで身の毛が弥立つ。

だが、あんな目に遭わなかったら君には出会えなかったんだ——





大きな牙が少女の柔肌に刺さろうとした時、間一髪で小さな体を抱えて龍星は受け身をとる!


「萩原ぁぁああ!!」

「萩原くん!!!」



腕の中でもぞもぞと動く小さな生き物に泣きそうになりながら、彼女の頬を撫でる。



「……リュウ、セイ…?」


「バカヤロー!!!!!説教は後だ後だ!!一週間、おやつ抜きだからな!」



そして抱きしめる力はあまりにも弱々しく、少女も少しだけ泣きそうになっていた。