「あれ……君は、」



スザクが帽子を差し出そうとした瞬間、鏡子が大きな声で叫ぶ。



「あ、貴方!この前、千影様に滅しかけられていた大蛇!!」


「——っ!!」


美鈴は大きな瞳を潤ませ、鏡子の見つめた。——う、うぅ…可愛い女の子だ。

そして、隣に居る方も白が綺麗です。



「本当か?!……あの"女"の命令で偵察かよ!!」

「ち、ちがっ…」



多分"あの女"というのは、菊花様のことだと思う。白い少年の眼も途端に恐ろしいものになり、"善狐"の力を感じ取ってしまった…。



(き、狐っ!)

——ズキズキと傷が疼き出す。だが、菊花様から玖珂家との因縁は御当主様と菊花様がお話なさっているのを聞いたし…


鴉丸様からも色々と伺った。


(美鈴、菊花様も負い目を感じておられる。…魑魅魍魎の主であれど、一人の女性なんだよ)


…あの夜、菊花様の家にお泊まりさせてもらった時…。我が主は悲しみを帯びた、数百年前の"自分"のような眼をしていた。



あんなに強気で居るのに、本当は…儚いお方なのだとそう思った。




「ハッ…。どうだがな、土下座してもあの下衆女の卑怯さは健在だな!!」





(——何ですって?)

美鈴は口元を引き攣らせ、シッカリと白の瞳を見据えた。





「——…菊花様は卑怯じゃない。ましてや下衆でもありません」