「……"影"が確かに濃い」
俺は険しい表情で井上穂積を見つめる。——なんて下衆な連中なんだ、あんなにボロボロになっている井上をまたバスケを使って公開リンチをする気か。
「…チッ、高村…あの淀みきった空気は"俺達"にしか見えネェのか?」
萩原は奥歯をギチギチと鳴らして、目の前を見据える。
Bコートには、またもやニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべるF組と顔を伏せながながら立っている井上が居る。
"連中"から流れ出す気分が害される空気。相当な邪心を抱いていることが伺えるのだ。
「……そう。私達のように《見えないなにか》を見える人にしか見えない空気。そして、あの"井上穂積"も——
私達と"一緒"の境遇にいる」
俺と萩原は軽く瞳孔が開いた状態で高村を見つめる。
「どういうことだよ?!…井上も《見えないなにか》が見えるのか!」
「……この学校、特殊な人間多くネェか?」
「萩原君、それはごもっともです…」
あんな気分の悪い空気が目に見え、直に触れてなんていたら相当精神的に来るぞ…。
そして、試合が始まれば…またさっきのように理不尽に固いバスケットボールを当てつけられる。
「オイオイオイ〜井上、ちゃんとパス受け取れって〜」
「そうだぞ〜?」
井上は井上は悔しいそうに唇を噛み締め、痣だらけの体を引きずって立ち上がっている。
——Tシャツの裾からもその痛々しい痣が。

