にしてもその存在が本当にあったとは——
菊花は意を決したように歩き出し、井上を真っ直ぐ見据えるのだ。そのあまりにも鋭い眼光に若干震え上がる少年。
《四精霊》とは神と同等の自然の魂だ。そんなものを人間が従えるとは言語道断。
だが、それを司り従わせれる人間が存在する——それが《精霊師》。
「あ、あ……っぅ」
「私は2年A組の高村 菊花。出来れば《マイフェアレディ》って呼んでくれると嬉しいかなー?」
「オードリー・ヘップバーン……ですか?」
そんな怪訝そうな目で私を見ないで!!
「まぁ、最終的にそこ目指してるけどジュリー・アンドリュースって呼んでくれても良いぞ♪」
「………《メリー・ポピンズ》のように空飛んじゃうんですね」
「でもまぁ、《サウンド・オブ・ミュージック》でドレミの歌歌っちゃっても良いけど」
私はクスリと笑いながら、少年の横に座って先ほど出会ったトカゲさんに小さく頭を下げたのだった。
「……あ、あの…。何でさっきから先輩や…玖珂君は僕を助ける、んですか……?」
またもや、ザワリと心が騒ぐが。もう別に気にしないわ。
世の中、楽しいことがあったほうが良いよね?
「君は私と出会った事を無かったことにしようとしていることに対して、私はその問いにどうやって返答すれば良い?」
私がそう言えば、ぐっと押し黙ってしまった。ありゃりゃ、ちょっと意地悪しちゃったかな…。

