途端に植木君の顔が歪んだけど…。何か私、やらかしちゃった…?



「——……何してんだよ高村」

「う、植木君?」


無理矢理腕を掴まれて、立たされてしまったのだ。えっと…これはやっぱり、私何かしちゃった感じデスカ?


「なーにキョドってんだよ"菊花"」

「く、玖珂っち??!!」

その瞬間影を含んだ笑いで私のTシャツを引っ張って来る玖珂君…。あの…お姉さん、襲っても良いんですか?


「おめーが"玖珂っち"言うな。あの、今俺が"菊花"と喋っていたんですけど」


ヒクリと植木の口端が引き攣り、そのまま菊花の荷物を奪ってずんずんと歩き出したのだ。



「えっ、えぇぇぇええええ!!??」


(何このラブコメチックな状況は…)

(おぉ、加藤じゃん。お帰り)

(……玖珂っちのオーラが黒いよ…)


萩原と加藤は溜め息をつきながら、忘れ去られた団扇で風を仰ぐのだった。











「……ちょ、ちょっと植木君?どうしたのよ…」

菊花は引きずられるように植木に引っ張られるのだ。そして向かっているのは…グランド方面。


「……高村の馬鹿」

「ちょっと!そんな今更なこと言わないでよ?!この頭は1Bしか要領無いからね?!」

「だったら一文字しか記憶できネェよ…。そうじゃなくて、」



ていうか、行く先々で女の子に睨まれているような気がするのは私の気のせい?いや——男子からも射殺されそうな勢いで睨まれているような……。


(アレレ、涙が溢れて来るゾ?)