そして、"始め"に戻る。



「…命を断つですって?あんまり面白くない冗談ね」



目の前で威圧感のあるオーラを放つ巨大な狐(?)をどうしたら良いのだろう。
私は早く家に帰りたいし、ドラマの再放送も見なくちゃいけない。


植木君のことは家に帰ってから考えるとして、目の前にある問題をどうにかせねばならない。




「ほほう…。冗談ではないぞ《人間の娘》。貴様から"陰"の力を感じ取った、しかも妖怪をも凌駕する強大な力——儂は嫌いじゃない、そのような"存在"」



一々勘に触る言い方をするな…



「何が言いたいの。私を殺すの?殺したいわけ?」

あくびれた様子に《千影》は美しい翡翠色の瞳を細める。




「《人間の娘》、それこそ冗談か?そんなに強大な"陰"の力を放出して自爆するつもりなのか」


儂は《百鬼夜行の頭》を探していたが、

途中、あまりにも妖力にも似た"陰"の力が放出されていたので菊花の元に立ち寄ったわけだ。


寄り道は好きではないが、これは中々の掘り出し物だな。



「黙れ、化け狐」

「失敬な娘だな。儂はこれでも"元"神だったんだぞ?」



一気に化け狐から異様な空気が放出された。…気分が悪い、遠くから鴉の鳴き声が聞こえてもうすぐで日没だとぼんやりと思う。



「…神が妖怪に成り下がっただけの話でしょう。今はただの妖怪——少し、落ち着いたらどうよ」

「中々面白い娘だ。儂の力を限りなく放出しているのにも関わらず、顔色一つ変えぬとは!これは愉快」




グランドの方では、この化け狐の気に当てられたのかバタバタと人が倒れて行く…。

妖しげな笑みを一つ落とされ、私は一歩ずつ距離を取る。これは本格的に危ないかもしれないな。