——何が、起こった。




釈然としない空気だと感じるのは俺だけか?


(何で、地面に座り込んでいるんだ俺…)



手からはバットが離れていて、やけに指先が冷えていることだけしか理解できない。

(やけに肩が軽いような…)


自分の掌を見ていると、刑部と相手のピッチャーに審判がこちらに駆け寄って来た。




えっ?






「お、おい…刑部。どうしたんだよ…」

「植ちゃ〜んっ!大丈夫か?!」

「えっ…何が、」


刑部が俺の肩を叩きながら、泣きそうな顔をしているのだ。


「大丈夫かい?!…俺が投げたボールが今君にデッドボールになりそうになったんだよ?」

「はっ…?」



あまりはっきりとしない頭の中で気がついたのは、「危ない」と叫ぶ隣の席の女子の声が聞こえた事だけだった。