「何で玖珂君がそんな情けない顔すんのよ。


もう謝らないで、私達互いに傷つけばっかで謝ってばっかり。——これは"宿命"なの、私達は"対"になる存在なの。そんな言葉はいらない」



菊花は正影の髪を撫でて、小さく笑うのだ。目の前に立ちはだかる壁もそれぞれの方法で壊せば良い、扉のように開けば良いんだ。



「——いつだって、アンタは希望の光に溢れてるんだよ」


光を統べる者よ、それに流れる血はとても熱い。だけれど、それは心地よい熱さ。

諦めない姿、何があっても食らいついて来る精神力は目を見張るんだ。



目の前で眩しく光る一筋の光を掴んでみようかな——



菊花はそっと立ち上がって、蛇をまた体に巻き付けて襖を開ける。目の前に広がるのは美しく妖しい月光だ。




「——それじゃあ、学校でね?」




菊花は笑いながら、部屋を出る。そして、中から——



「じゃあな!!」



という荒げた声にやれやれと肩を竦めながら長い廊下を歩き出す。




(思い切り、その"約束"を胸に抱きしめて)



私の誓いを崩さないように歩き出すの。まだ解らないことばかりだけど、前を信じて歩き出そうと思うの。


未来に絶望していたけれど、彼みたいに「未来なんざ変えてやる!」そういう熱い心を持っていれば変わるような気がするんだ——


今は解らないことばかりだけれど、そうやって信じていれば——





(俺の家族に手ェ出すな!)




本当に未来すら変わると思うの。