「…何っ、儂の生気を流し込んだのに…」
菊花は乱れた呼吸をし、地面の砂を握りつぶしながらゆらりと体を起こすのだ。唇を噛んで血液がどろりと溢れ出す。
左肩や肩はほとんど使い物にならない…
(…まだ立つか、あの女)
「……なんつう執念だよ」
龍星はぼそっと呟きながら地面に突き刺さっている刀を引き抜く菊花の姿に呆然とした。
「"天狐"の力を注ぎ込んでぶっ倒れねぇ……なんて、奴だよ」
「…随分と私も舐められたものだな」
菊花は乱れた自分の髪を掻き上げ、正影をジっと睨む。
「…天弧という頂点に君臨する妖狐が何故陰陽師を後ろ楯するか知らないけど。神の力を流し込まないで欲しいわ」
「——貴様、何者だ。人間の器を持ちながら、その妖力は完璧なる高等妖怪……儂は今まで永い時を生きて来たが、そのような存在…皆無だ」
——でしょうね。
口元を歪め、刀を片手で構え直す菊花の背後からまたもやどす黒いオーラが放出されるのだ。
「面白ェ、この前の続きをするのかよ」
「そんなつもりは一切無い。……だけど、粋がるんじゃないわよ」
互いに刀を構えた瞬間、一気に二人は駆け出して刀同士が衝突し合うのだ。
火花を散らせ、互いの力を放出し流し込み、いがみ合う。
「またその数珠かよ」
「…ハンデよ、ハンデ!!」
(……魑魅の力、天狗の風を巻き起こせ!!)
刀を無理矢理払い、菊花の刀から突風が巻き起こるのだ!
「か、風だと?!」
「——風の陣・鎌鼬!!!!」

