虫かごに補虫網を持った子供たちが駆けていくところだった。

「それぐらいの歳の人たちにとっては、ああやってた頃の思い出ってのは、やっぱ大切なもんじゃないのかな」

オレにはまだ分からないけど。

達郎はそう付け加えた。

…そんなものだろうか。

いや、そんなものなのかもしれない。



あたりに響くセミの声に網を振り回す子供たちの歓声が混じる。



あの子たちもあと何十年かたった後、ふとした拍子で今日のことを思い出すのだろう。



遠くから、パトカーのサイレンが聞こえてきた。





『ブラームスの小径』

END