「課長、証拠品はすべて押収したんですよね」

「はい。リストをお見せしましょうか」

「お願いします」

達郎は颯爽と身をひるがえした。

あたしはその腕をつかんで止めた。

「なんだよ、レミ」

「素直に言いなさい」

「なにを?」

「あんた今、ごまかしたでしょ」

たぶん扇署の押収した品は達郎にとってあまり意味はない。

まったくないとは言わないが、口で言うほど興味はないはず。

たぶんあたしの追及をかわすためのポーズだと思うのだ。

根拠はない。

ただ、お目付け役としての長年の勘が怪しいと告げている。

「ごまかしてなんかないって」

達郎はあたしの手を押さえた。

「それにレミに迷惑をかけるつもりはないから安心しろ」

そう言って迷惑かけられなかったこと今まで一度もないんだけど。

部屋を出る直前に達郎は言った。

「やっぱ現地には、足を運ぶべきだな」

不敵なその独り言に、あたしの不安は募る一方だった。