空と海に囲まれた世界しか知らない。



ふと思う時がある。それは、果たして幸せなのだろうかと。



その時、扉をノックする音が聞こえ視線をそちらの方へ向ける。



「はい」



返事をすると、礼儀正しい若い青年の声が返ってきた。



「空様、頼まれていた本をお届けに参りました。中へ入っても宜しいでしょうか……?」



一々聞く必要もないと空は思うのだが、周りはどうやら、空とは違う考えでそれを許さなかった。