「来てみて正解だったよ」

「虫の知らせ、ってやつか?」

「――まあ、そうだね。空様を離して貰えるかい」


氷悠が何か言おうとしたより先に空が口を開いた。


「玖音、それはできません」

「どうしてですか!?空様を助けるのは――専属騎士である、僕の役目です!」


珍しく声を荒げる玖音に空は驚いた。今まで一緒にいても、こんな玖音を見るのは初めてだった。


空はこんな状況なのに、それを嬉しく思い微笑んだ。



「わたし、やっと自由になれるんです。今まで、自分で行動する事ができなかったけど…氷悠が、わたしの殻を壊してくれました。

玖音――どうか、自分を見失わないで」



凛とした口調でそう言われたのは、今が初めてだった。



追わなければと思うのに、何故か体は動かずそのまま氷悠は最上階から飛び降りてしまった。