「まま、座って」

ソファーに案内される。

「夏っていうから。よろしくね」

「よろしくお願いします」

「かっこいいね。歌舞伎役者みたいな顔してるじゃん」

俺は昔からそう言われる。

今時の外人風の顔立ちではなく、昔のイケメンのような感じだった。

「スーツこれでいい?ここで着替えちゃっていいからさ」

そう言われホスト独特の細身のスーツを差し出された

着てみるとちょうどいい。

鏡に映った姿を見て、自分でカッコイイと思ってしまうぐらい見違えた。

「それでいいね」

「はい」

「まあ、今日は気楽にやってよ。ユウタと一緒に席回ってもらうからさ。ユウタが教えてくれるから」

「あの履歴書持ってきたんですけど」

「ああ、ありがとう。一応受け取っておくよ」

いい加減な面接というか説明だった。

今まで受けてきた、昼間の仕事とは明らかに違う。

「名前決めてる?」

夏が聞いてくる。

「いや・・・」

そう言えば何も考えていなかった。

「決めてないみたいだね。本名のリュージでいいんじゃない?ホストっぽい名前だしさ」

「はい」

「じゃ、始まるまであと一時間ぐらいあるから、くつろいで待っててよ」

そう言って夏は離れていった。

店内にはクラブでかかるような耳の休まらない音楽が流れる。

店内を見る。

ソファーに座り携帯をいじりつつ食事している人間や、黙々と掃除している人間がいる。

ユウタはモップで掃除している。

おそらく新人などは掃除をするのだろう。

俺の人生の新たなスタート。

刑務所などという最底辺の場所とは違う華やかな世界。

営業開始までもうすぐだ。