さよならの十秒前

「一度、だぜ?僕はたった一度しか彼女の見舞いに行かなかったんだ」

「別に、お母さんはそんなつもりで言ったわけじゃないと思うよ?」

「わかってる!…わかってる」

苦しそうな西野の横顔を見て、私の胸はまた痛んだ。