さよならの十秒前

「…きれいなこと?」

「うん…なんか、テレビとかだと、美化されてる、っていうか」

昨日の映画のポスターが、脳裏によぎった。

「…うん、わかるかも」

「でもさ、死ぬって、怖いよ」

紗枝はもう一度、窓の外をぼんやり眺めた。

「…もう、謝ることだって、できない」

ドリンクの氷が、カランと小さな音を立てた。