黄色と黒の縞模様のカラーテープが、わかりやすく、立ち入り禁止を主張している。
その工事現場は、一夏前まで、私たちの遊び場だった。

都会の中に、奇跡のように残っていた、草原の空き地。
柵も、所有者を表す立て看板もなくて、子供たちが自由に入り込んでも、誰からも文句を言われたりしない、今時貴重な空間だ。
私たちは、その小さな原っぱで、虫取りをしたり、鬼ごっこをしたり。
日暮れまで、駆け回っていたこともある。
「二丁目の、雑草公園」
親しみを込めて、そう呼んでいた。
だけど、そんな小さな空き地にも、所有者は、いるものだ。
その人が、ここを、売地にしたのが、去年の秋。
買い手がついたのが、今年の春。
小さな庭のついたマイホーム。
そんな夢を叶えるために、私たちは、この場所を追い出された。

ここに越してくる人は、どんな人だろう。
一度、ちらりと見たことがある。

優しそうな、若いカップル。

大きなお腹を抱えた女の人は、幸せそうに、男の人に寄り添っていた。

雑草公園から、子供たちの声が消える。

かわりに、小さな家が建つ。

そこで生まれる小さな仲間は、かつて私たちの場所だったそこで、すくすく育っていくだろう。

私たちも、そうだったように。


立ち入り禁止のカラーテープを、私は、笑って見下ろした。

さよなら、雑草公園。

私たちは、もう、この場所からは、卒業しなくちゃいけない。

でも、この場所の思い出は、いつも心の中にあるはず。

この場所が、たったひとりのための、庭になっても。私たちは、大切な思い出を、忘れはしない。