マミーの恋人

「あ~おなかいっぱい・・しあわせぇ・・・」




スミレはキモチよさそうに軽く伸びをした





それを見たわたしの頭の中では、盗くれた
いわしを食い終わった野良猫の
画像のフラッシュが駆け巡った。





眩暈がした。





「さて、黒ちゃん、カラオケ行きますか?」





「おう。久しぶりにマイアヒ歌うぞぉ・・・!!」





え?




スミレが瞬間冷凍した。





液体窒素の中に放り込まれた
バナナみたいに
かちかちに固まった。





「黒江真凛さん、それはいつのお歌でしょうか?」





「んーとね、5年くらい前のヒット曲だお。
モルドバ共和国出身のグループの楽曲でそ。
原曲の邦題は「菩薩樹の下の恋」
なんちゃって日本語でさ、
のまのまいぇいとか歌ったじゃん、小学校のとき。
あたしゃあれを原曲で歌えるぞ。
ほんとはすんげえ悲しい歌なんだぞ。
失恋ソングだぞ。メロディは能天気だけどな。
ネットで歌詞調べて中学受験のとき聞きながら勉強してた」




スミレは涙が出るほど笑った。




「黒ちゃん、ウケるんですけど。
いまどきそんな歌
カラオケで歌うやつっていないって」



え?え?そうなの・・・




陸上部で歌ったときは結構盛り上がったんですけど・・・




あれって、気のせい?



やばい、また弱みを握られた・・・




くっそお・・・スミレのやつ・・・・。




今度は冷凍ガスの逆噴射がわたしの顔面を襲った。