ありがとう【被害妄想彼氏 番外編】


「…って、
もうこんな時間やん!」


慎二くんは携帯で時間を調べると、夜十時を回っていた。



「っしゃあ!
じゃあそろそろ帰るか?」


ベンチからヒョイっと跳び下りると、スタスタと歩いて行った。



「家どこなん?」



くるりと振り向き、あちらこちらを指差し、
私が家の方向を指差すと、そちらの方へ歩いて行った。



「ふふ~ふふふふ~ふふふ」



慎二くんは鼻唄を歌い、
スキップしながら夜道を歩いている。



「誰の歌?」


私が聞くと、
慎二くんは足を止め、また振り返る。


「これな、
俺が好きなインディーズバンドの歌やねん!

でも、奈良出身のバンドやから、最近ライブ行けてへんねんけどな!」



…と、嬉しそうに話した。