「おい、ハゲ!

さっさと立てや。行くで!」



慎一さんは私の手を掴み小走りで歩きだした。




「慎一さん?
あの人知り合いなんじゃないんですか?
挨拶とかしなくていいんですか?」



慎一さんはずっと歩き続け、
足を止めた。



あの人と、何かあるのかな……



………ん?



私はあることに気付いた。



「ああっ!」



「何やねん!
いきなり大声出すなやっ」



慎一さんは私の頭を叩いた。



「だって、手…」



私の左手は、慎一さんの右手と繋がっていた。



「手ー繋いだだけで顔赤すんなっ!!」



だって、
嬉しいんだもん。



「何か食いに行くか?」


慎一さんは手を握ったまま、
問いかけた。




「私、ハンバーグ食べたいです!」



「お前安上がりやなぁ。
それでも金持ちの娘かよ。」




慎一さんの車に乗り込むと、
車のプレイヤーから音楽が聞こえてきた。



その音楽が、
切ない系の音楽なのは、
慎一さんぽく無い感じがした。