瞳さんとネクラさんは、同一人物で
慎一さんが好きだった人。
「ごめんね、
私が知ってるのはそれだけなの。」
店員さんはそう言って仕事に戻った。
……そうだよね。
慎一さんも人間なんだもん。
恋くらいするさ。
「おい、ハゲ!
なんか陰気臭いぞ!」
え?
慎一さん戻ってきたんだ。
私はぼうっとしていた。
思いのほかショックだったのかも知れない。
「具合悪いんやったらそろそろ出るか?」
……慎一さんって、
こんな優しかったっけ?
なんだか、
その優しさまでが
その女の人の為に作られた優しさみたいで、
胸が苦しかった。


