「――!?羽根っ…?」
何を言っているのでしょう。
今の僕の「言葉」で、羽根が生まれたというのでしょうか。
よく聞き取れなくて、僕は花たちに近付こうと、少しだけ花畑へと足を戻します。
ロマの哀しみの雨で、溢れ出しそうな露の水溜まりの向こう。
花たちが口々に僕に言うのでした。
『ユラ、気付カナイ…』
『イツモ在ッタヨ』
『…ズット羽根ハ在ッタヨ…』
『不思議ナ「力」ヲ使ウ時、背中二、イツモ在ッタヨ…』
「……羽根…?」
僕は恐る恐る、水溜まりに一歩近付きました。
僕は、怖かった。
自分の姿を見た事がなかったのです。
ダッテ、
人々ト僕ハ違ウカラ。
僕ハ…、
ドンナ恐ロシイ姿ヲシテイルンダロウ。
ドンナ…
怪物ナンダロウ…
今までその違いを理解したくはなくて、目の当たりにはしたくなくて…
逃げていたのです。
もう逃げるわけにはいかなくて、水溜まりを覗き込みました。
この世界の人間たちの姿。
白く透き通るような肌。
茶色の髪、灰色の瞳。
その彼らの姿と何ら変わらない僕が、水面で揺れていました。
「…ぁ…」
恐ろしい姿を想像していた僕は、ホッとして泣き出しそうになりました。