何気なく…、
僕は、森の主の樹の幹に触れました。

すると、
植物たちにしか聞こえないはずの、風たちの声が…
彼を通して、僕にも…

聞こえてしまったのです。



――神様はどうして助けてくれないんだ、って村人たちが怒っているよ―――

――大変な時に神様来ない、ヒドイ、ヒドイ、って泣いているよ―――


「……っ!!」

僕はハッと青ざめて、幹から手を離しました。


ザワ…
『…ユラ、今は…わしに触れちゃいかん…。わしが完全に心を開いておる相手…、ユラには…、伝わってしまうんじゃ…』

森の主は優しく悲しそうに、僕に光を降らせます。

彼は沢山の情報の中で、僕に伝える事を選んで語ってくれていたのだと気付きました。


僕ヲ、
傷付ケナイ為二…?


僕の心が荒れてしまうと、この世界に影響を与えてしまう事を、彼は知っていました。


世界ヲ、
守ル為二…。


ザワ…
『…実を言うとな…。森の入口に、我を失った人々が押し掛けておる…。今は、森の中に村人が入って来れない様にしとるんじゃ…』

「…そう…だったんですか…」

平常心を失った人々が、死の恐怖から逃げる様に…僕を求めていたのです。