ユピテルの神話



木々から注ぐ、沢山の緑色の光の粒の向こうでは、紺色の空が覗いています。

そこに浮かぶ月は、
僕の心の一部。

一番遠くから世界を照らす月は、僕の「怒り」の心。


「…あぁ、そうですね。僕が怒り、彼らを憎しみ、そして……」

僕は月の語り掛けに思い出し、地面に瞳を伏せました。


遠く遠くに浮かべた心。
僕から切り離したその時の「心」を、僕は忘れてしまうのです。

夜空の月を見上げる事で、少しずつその出来事だけを取り戻す事が出来たのです。


少し感傷的になってしまった僕を察して、ロマが僕の膝に寄り添い、鼻を鳴らしました。


クゥン…
『…俺、ちょっと知ってる。俺の中、その時の「哀しさ」ちょっとだけ在る。だから分かる。』

まるで痛みを共有する様に、慰めるかの様に僕の膝に上るロマを、優しく優しく撫でました。



「おじいさん、他の訪問者は…」

『…うむ。それがな…、二人目はなぁ、エマの弟が来たんじゃが…。』


「…弟ですか。」

エマ、

彼からその名が語られた時、少し心が揺れました。
弟と聞き、僕は落ち着きを取り戻したのです。