彼らと僕の違いが悲しくて。
例え心を通じ合っても、理には逆らえず別れがやって来る事が哀しくて…。

そんな想いは、ロマだけで充分だったのです。


僕は、次第に村人たちと距離をとるようになっていました。
村に在った僕の家は、茶色の大地の傍らへ移し、一人静かに暮らしていたのです。


「…ユラ~?居るの?」

願い事も無しに僕を訪れる人は早々居ません。
神と崇められた僕を、親近感を込めて呼び捨てにする人は、もう一人しか居ません。


「…エマ、また学校をさぼって来たのですか?」

見えない瞳を補助する白い杖を器用に操りながら、彼女は僕の声に近付いてきました。


「まぁ、ひどい。ちゃんと終わらせて来たわよ。この間その事で『ユラ様』にお叱りを受けましたからねー。」

「ふふ、それは失礼しました。」

亡くなったロマが大層に可愛がっていた孫、エマです。
あの幼かった女の子は、あどけなさが残る少女へと時を進めていました。


僕は皆との距離を置こうと彼女すら拒絶したのですが、それでも彼女は僕の元へ通い続けました。

心からロマを慕っていた僕らは、同じ哀しさを抱えていたのでしょう。