「…ねぇ、おじぃちゃん。今日もいっぱいお話しして?」

女の子がそう精霊を見上げると、まるで微笑んでいるかの様に枝を優しくしならせて、彼は緑色の光を降らせます。


サァ…
『…あぁ、いいじゃろう。今日は何を話そうかの…?』

精霊の問い掛けに、
女の子はきらきらと瞳を輝かせてこう答えました。


「んーとねぇ。あたし、またユピテルの神話のお話がいい!」

その横で…
女の子をジトッと見上げ、黒い犬竜が不服そうに鳴いたのです。


ワンッ!
『ぅえーーッ!?またかよッ、ハルカぁ!ヤダー。俺、違うお話がいい!飽きちゃったって~ッ!』

「いいじゃん!好きなんだもん!いいよ、コンはその辺で青い虫さんと遊んでれば~?」


『ぎゃッ!何よぉ、その言い方!ヒドイ、ハルカ。俺が泣いちゃってもいいのかッ!?』

シッシッと追いたてる女の子の手元を見ながら、犬竜はウルウルと瞳に涙を溜めてゆきます。

それでも女の子は犬竜には見向きもせず、大きな樹を仰ぎ見て、彼の言葉を待っていました。