「…おじいさん、風たちを少しの時間貸して下さい。これから…僕がする全てを、貴方の元へ知らせる為に…。そして、貴方は人々に伝えて下さいね…」


上手に伝えて下さいね?
あの神話、そのままに…。

人々に、夢を与える物語であって欲しいのです。


『………。』

森の主は、風たちの声に耳を傾けていました。


「…あぁ、風たちは何と言っているんですか?僕からも、ちゃんとお願いしなくてはいけませんね…?」

そう僕は元気な振りをして、森の主の幹に触れたのです。
風たちの声を僕自身が聞く為に…。


――…ているよ…。エマが、ずっと此処で泣いているよ。―――


「――…!?」


…ドウ…シテ…?


――ユラ様を心配して、雨の理由を知りたくて…。森の主に秘密と頼んだエマ。主の太い幹の裏に隠れていたエマ…―――


――聞いてしまったよ。全部、聞こえてしまったよ…。ガタガタと震えて、ユラ様に見つからない様にと声を殺して…ずっと泣いているよ?―――


ザワ…
『…すまない…』


時に、優しさは残酷な偶然を生むのです。


偶然ジャナイ。

キット、
コレガ…運命。