「そういえば、知ってるか?」

龍也は言う。

「何を。」

「夏の夜の学校のプールには人魚が出るって話。」

蒼は窓の外を見る。

「あるよねぇ、夏になるとそういう噂。」

「本当らしいぞ。生徒でも見た奴がいるとか。」

アホらし、と蒼は顔を歪めた。

蝉の鳴き声が窓から入ってくる。

夏の暑さを倍増する音だった。